物を買う、という行為は、この国ではなぜかあまり褒められない行為のようにうけとられています。(浪費癖)だと
か(衝動買い)だとか(無駄遣い)だとか、そういう言葉に表現されるように、必要意外のものを買う人間はあまり
かんばしい評判をえられません。しかし、以然から思っていることなのですが、物を買う、ということは、決してただ
お金を浪費し、虚栄心を満足させるだけのことではないような気がするのです。
何かいやなことがあって、むしゃくしゃしたい気分を抑えるためにショッピングをする人がいます。必要のないも
のにお金を遣うなんて愚かしい行為だと理性的なひとは言うでしょうがそれでも人間の精神のバランスをとるため
に費用をかけたと思えば、それはそれでいいんじゃないでしょうか。
人間は大人になって死ぬまでの間、お金のことで苦労しながら生きていきます。生まれながらにして無限の富
を与えられた人はべつですが、ほとんどの人はおかねの苦労というものでエネルギーをすり減らすことになりま
す。そんな中で一瞬ふっと、お金のほうが主役で、自分はそれによってふり回されているつまらない存在のように
感じられることがあります。
お金のことで苦労し、血と汗を流している人ほど、どういうものか無駄遣いすることがあるのです。一見、逆のよ
うですが、それはお金に対する人間性のささやかな犯行とでもいえるんじゃないでしょうか。お金を浪費する、や けっぱちになって
か み く ず
紙屑のように遣う、そのことでもって、こちらのほうが主人なんだぞ、お金に使われてるんじゃな
いぞ、と心の中でうっぷんを晴らしているのかもしれません。お金に復讐することで人間性を回復しようとしている
のです。
(五木寛之『生きるヒントー自分の人生を愛するための 12 章―』角川書店)
36 番に掲載された文章に基づき、最もふさわしいものを 1、2、3、4、5 の中から一つ選んだあと A、B、C、D、E の
中から一つ選びなさい。
それはそれでいいんじゃないでしょうかとあるが、どういうことか。
1.ショッピングで必要なものを買ってもいい。
2.何かいやなことがあってもいい。
3.むしゃくしゃした気分を抑えたほうがいい。
4.必要のないものにお金を遣ってもいい。
5.お金が主役と考えている。